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FULLCOUNT PRESS AUGUST 2025
1993年に大阪で創業したフルカウントは、完全国産のハイクオリティなデニムを軸にしたコレクションを展開。デニムの素材には希少な超長綿のジンバブエコットン(※オーガニックコットン)を使用し、岡山県の希少な力織機で織った生地は、ヴィンテージデニムに引けを取らない色落ちと、「一度穿いたらやめられない」と言われるほどの穿き心地が特徴です。現在は日本のみならず “ジャパンデニム”を代表する存在として海外でも高く評価されています。
今回はジーンズ好きの間で頻繁に話題になる、「ジーンズは洗うべきか」論について。
30年以上ジーンズに向き合ってきた、フルカウントの創業者であり代表の辻田幹晴が、長年心に溜めていたその議論の「結論」を、メッセージ形式でお伝えします。
「デニムは洗わない方が良い」なんて、誰が言い出した?
2026年SSシーズンの展示会が9月に迫ってきました。
フルカウントのシーズンテーマは、プロダクトに紐づくものではなく、その時の自分の気分や感情を文字にすることが多いのですが、今回のテーマは
WHO THE HELL SAID DENIM SHULDN'T BE WASHED !
(デニムは洗わない方が良いなんて、いったい誰が言い出したんだ!)
という、少し議論を投げかけるワードになっています。
このテーマの意図は文字通りです。デニムが好きな人は「ジーンズは洗わないで穿き続ける方がいい」とよくお話されますが、僕はずっとその「常識」に違和感を持っていました。
そもそもそんな話、誰が言い出したんでしょうか?
今回は、30年以上デニムに向き合ってきた自分だからこそ、その議論に終止符を打ちたいと思い、今回の展示会のテーマにしました。ハッキリ申し上げると、僕は「デニムは洗うべき」と考えています。
ここでその理由をお伝えしたいと思います。
フルカウント 代表 辻田幹晴
ヴィンテージデニム流行初期に始まった、「デニムは洗わない説」
90年代初頭頃に日本で始まった1回目のヴィンテージデニムブーム。
1950年代以前のデニムの価格が高騰し始め、特にミントコンディション(濃色)の物には高い価値が付きました。しかし、それを洗濯機で洗濯しょうものなら、一気に色落ちが進み、物によっては個体ごとバラバラになってしまう場合もありました。
この現象は、デニムが数十年経過する事で、生地が「酸化」し、インディゴ染料の分子が離れやすくなることと、生地の強度が無くなってしまうことから起こります。
せっかく高値で販売した商品がそんなことになってはクレームを受けることになるので、最初はヴィンテージ屋さんたちが「ヴィンテージデニムは洗わない方が良い」と言い始めたのです。
僕はこのことが拡大解釈されたことで、「デニムは洗わない方が良い」という言説が広まるきっかけになったと考えています。
それでもあなたはデニムを洗わず穿きますか?
その後、ウチのような「レプリカジーンズ」と呼ばれるものが日本から生まれました。
本来は、取り扱いに慎重さが求められるヴィンテージデニムを穿かなくても、気軽に穿きながら経年変化を楽しめるものとして生まれたのですが、ヴィンテージデニムの取り扱いの影響をそのまま受けたことと、洗わずに穿き続けることで、ユーザーが「ヒゲ ※1」や「ハチノス ※2」などのディティールを愛し、よりメリハリのある色落ちを求めるようになったため、「レプリカジーンズも洗わない方が良い」という説が定着してしまいました。
※1 ヒゲ…ジーンズの膝上から腰付近にかけて生まれるシワのアタリ。
※2 ハチノス…ジーンズの膝裏に生まれるハチノス状の色落ち。
しかし、数ヶ月、いや数年も我慢して洗わずに穿き続けたデニムは、激しいメリハリの色落ちの代償に、汗などの内的要因と外から雑菌を溜め込むことでズッシリと生地が重くなり、生地の酸化が進み、強度が落ち、悪臭を放ち、他人に不快感を与えるものになってしまいます。
それでもあなたはデニムを洗わず穿きますか?
もちろん下着ではないので、毎回の洗濯は必要無いかもしれません。
例えば自分の場合、季節によりますが「5〜10回の着用につき一回洗濯」するイメージでも、素晴らしい経年変化と、着用を重ねるごとに肌に馴染んだ、最高の穿き心地を得られます。
よくお客様に、「辻田さんのジーンズの色落ちみたいにするにはどうすればいいですか?」と聞かれるのですが、その度僕は、「何も特別なことはせず、少し重くなったなと感じたら洗っていますよ」と答えています。
少なくともフルカウントのジーンズは、洗ってもしっかりキレイに色落ちするように作っているので、安心して洗ってください。ちなみに今回ここに掲載したジーンズの写真は、普通に洗って穿き続けた僕の私物です。
デニムを愛し、デニムに向き合い続けた僕が断言します。
「デニムは洗ってくださいね」。
WHO THE HELL SAID DENIM SHULDN'T BE WASHED !
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