FULLCOUNTがなぜ同じジーンズを作り続けるのか
1990年代初頭からのヴィンテージブームにより、ヴィンテージジーンズの希少価値が非常に高くなりました。素晴らしい色落ちやセルビッチ等のアタリなど、経年変化のある物が格好良いというヴィンテージジーンズカルチャーが根付いた時代でもあります。 ジーンズの長年の歴史の中で、我々が最も良いと考えるジーンズは、40年代から50年代までの十数年しか作られておりません。経年変化が生み出す存在感、なにより足を通した者にしか解らない、抜群の穿き心地が最大の魅力であります。その最高だと考えるジーンズを再現し、品質を守りぬき、作り続ける事ができれば、世界一のジーンズメーカーになれるのではないかと考えました。 |
1993年の創業当初、我々はまずヴィンテージデニムを解体し、デニムを構成する糸の一本から生地の分析、また縫製の仕組みを徹底的に研究するということから始めました。すでにジーンズの最大の生産地であった児島に毎週のように通い詰め、理想のジーンズを作っていただける工場をさがしました。そこで判明したことは当時(創業時)の工場の設備では、50年も昔に作られていたジーンズを作ることは不可能であるという事実でした。 セルビッチデニムを作るための、力織機はほとんど稼動しておらず、ジーンズのような厚地に綿糸の縫製が出来るミシンや職人が存在せず、そもそも綿の縫製糸すら白と黒くらいしかストックされていませんでした。時代とともに生産効率が重視され、昔の機械は淘汰されていたと言う事です。今でこそ当たり前のように使用されているセルビッチ生地から綿糸、ミシン、ボタンなどの付属類までも、全て一から構築し直さなければならなかったのです。 |
我々の熱意も徐々に伝わっていき、根拠のない大きな夢に賭けてみようと協力をいただける人たちとの出会いが生まれ、その輪は少しずつ大きくなりました。そして一歩一歩課題をクリアし1995年にようやく納得の1本を作り上げることが出来ました。 それから20年、専属の提携工場では、当時のままフルカウントの定番ラインのみを生産し続け、職人の確かな技術がそのまま受けつがれており、クオリティーを保つために検品体制を怠らず、パタンナーとの連携によって微調整することで進歩しながら同じものを作り続けているのです。微調整とはデザインをアップデートするためではなく、長年にわたって同じものを作製するのに不可欠な作業なのです。 |
フルカウントが最も重要としている素晴らしい穿き心地を生むデニムは、もちろん力織機を使いますが、力織機のなかでも特にデニムに適した重布力織機を使用しています。昭和26年に創業し今では100台以上の力織機を稼動させている機屋さんですが、フルカウントは20年にわたって数台を確保し、同じ力織機で同じデニムを織り続けています。気温や湿度によってデニムの風合いが変化してしまう古い力織機は、それを操る熟練の職人の勘が頼りです。そして規格の異なるデニムを織ることによって、クオリティーが変わってしまうという事がないように、需要が少ない時期であろうと、多い時期であろうと同じ様に力織機を動かし続けることが重要なのです。 これらのこだわりはジーンズメーカーとして、フルカウントにしか出来ない強みであると自負しております。 |
僅か十数年しか作られていなかった、理想のジーンズ。 フルカウントが完成させたジーンズはそれを上回る最高の穿き心地であると確信しております。フルカウントのジーンズを20年以上経った今もなお穿き続けて頂いているお客様、穿きたいと感じて頂いているお客様。また我々を信じてどのような時でも変わることなく生地を作り続けて頂いている工場、職人がいる限り、我々はジーンズ作りを続けます。 それが止まることなく同じジーンズを作り続ける理由です。 |